クマのすむ山 |
このカバー写真を見て、驚かない人は少ないと思う。もちろん、ヤラセではない。剥製のクマを組み合わせたものでもない。
定点観察のカメラに、野生のクマが、偶然写ったものである。
この本の著者・宮崎学さんは中央アルプスのふもとの遊歩道に、定点観察カメラを置き、ツキノワグマの生態をカメラに収めた。
それで、この本の中に、つい最近、クマについて見聞きしたことと同じ内容のことが書いてあって、興味深く読んだ。
判りづらいとは思うけど、何を写した写真だと思いますか?
横にたくさんの筋があるのは判ってもらえますね。
これ全部、杉の幹に付けられたクマの爪痕なのだ。
この木のある場所に案内してくれたYさんによると、クマは冬眠から起き出すとスギやヒノキの樹皮を剥ぎ、樹液を舐めるということをやるらしい。
なんのために舐めるのかということは、ハッキリとはわからない。
「クマのすむ山」の著者・宮崎さんは、この本の中で「(樹液は)薬のような役割を果たしているのかもしれません」と書いている。「針葉樹には、さまざまな殺菌力のある物質がふくまれていることが知られています」ということも書いている。
そして・・・・
スギやヒノキの木は、寿命が1000年もあります。しかし、なかには、途中で病気になり、枯れてしまう木もあります。おそらく、ツキノワグマは、こうした病気の木を選んで、間引いているのでしょう。健康な木だけをのこして、森を健全にするためです。
こんな風に、凄いことも書いてある。
もちろん、日光にもクマは生息しており、カバー写真以外は、日光の山で撮ったものなのだ。
クマ、特にツキノワグマは、本来、好奇心旺盛なユーモラスな存在であると考えられる。ただ、お互いに不幸な遭遇というのもあって、山菜採りの人がクマに傷つけられるとか、悪くすると、クマに殺されてしまうという悲劇もあるわけで、これは、出遭いがしらの事故というのが多いらしい。
だから、クマのすむ山に入る場合は「クマ鈴」をつけたりして、人間の存在を知らしめることで、避けられることもあるだろう。
なにしろ、私は山で3度クマに遭遇し、いずれもクマさんの方が私を避けて逃げていったという経験をしている。
それにしても、クマは広葉樹の中で生活の大部分を過ごすと思っていたのだけど、アサハカでした。