20周年記念 薪能 |
昭和62年に始まったこの催しは、最初黒門の近くに舞台が作られ、黒門脇の杉の木からムササビが舞台の上を翔び、それに気づいた観客の中から小さなどよめきが起こったのを思い出す。私もこの観客の中にいて薪の爆ぜる音と、謡曲とシテの演技とムササビのコラボレーションに魅入られたひとりだったのだ。
その後、ムササビはこの薪能のスタッフのTシャツにシンボルマークとしてプリントされることになった。
それにしても、20年という歳月は徒事ではないな。例えば、今回の画像はたぶん2年目の薪能を撮影したものだと思うのだが、この日の昼間に行きつけだったS写真屋に行き、タングステンフィルム(照明光用フィルム)を求めてこの撮影に臨んだのだった。その頃大活躍した銀塩カメラ達はデジタルカメラにその座を奪われ、もう長い間保管庫の中で眠っている。
そして、いつしか舞台の位置も第1駐車場へと所を変えた。だから、たぶんムササビの飛翔はもう見られないだろう。
それでも、夏の宵、幽玄な世界を味わってみるのもすなわち面白き心なり(花伝書)ではないでしょうか。
【演目】
2006年 8月18日(金)
能楽 『采女』(うねめ)美奈保之伝(みなほのでん)
シテ 梅若 吉之丞
ワキ 宝生 閑(特別出演)
狂言 『柑子』(こうじ) シテ 山本 東次郎
舞囃子 『難波』(なにわ) シテ 梅若 修一
能楽 『天鼓』(てんこ)弄鼓(ろうこ)
シテ 観世 榮夫
ワキ 宝生 閑(特別出演)
2006年 8月19日(土)
能楽 『杜若』(かきつばた)恋之舞(こいのまい)
シテ 観世 榮夫
ワキ 宝生 閑(特別出演)
狂言 『樋の酒』(ひのさけ) シテ 山本 則直
舞囃子 『鶴亀』(つるかめ) シテ 梅若 猶義
能楽 『土蜘蛛』(つちぐも)
シテ 梅若 吉之丞
ワキ 宝生 閑(特別出演)
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