春の兆し |
人類にとっての記録メディアといえば石壁、樹皮、板、竹、獣皮、粘土板、布、そして紙などであった。とりわけメソポタミアを中心に使用された粘土板、これは便利だったと思う。だって、今で言うCD-RWだよ。上書きが出来て、半永久的に残そうと思えば、焼いてファイナライズすればいい。火災にも強い。
ただ、嵩張るのと壊れやすいのが欠点だな。
そこで登場するのが「紙」である。パピルスは紙ではないそうだが、英語のpaperはpapyrus(パピルス)から来ていると聞けばこれを嚆矢(起源)としてもおかしくない。
そして、「紙」は現在に至るまで、CD-R(書き込み専門)ではあるが記録媒体の中心として君臨し続けた。
植物の繊維(パルプ)を取り出して水の中に分散させ、それを薄く平らに漉き上げたもの
吾が大和の国においては、和紙である。
「和紙」とは書いてみたが、これは「西洋紙」に対する言葉であろう。ともあれ、西暦610年という年に高麗僧・曇徴によって紙漉きの技術が伝えられたことによって我が国の「紙」の歴史が始まった。
その「和紙」の原料となったのがコウゾ(楮)・ミツマタ(三椏)・ガンピ(雁皮)である。
立春からだいぶ日が過ぎたけど、日光はまだ「春」というには寒い日が続いている。今朝も、昨日の夜半から降った雪で一面真っ白である。
しかし、境内を歩いてみると、「和紙」の原料であったミツマタが蕾を持ち始めている。日光で「和紙」が作られていたということはどの文献に当ってみても記載がないのに、境内にはたくさんのミツマタがある。
このミツマタの白く見える蕾を見ると、春はもうそこまで来ていることを実感させられるのだ。
四月になればいよいよヤシオツツジがピンクの花を咲かせる。
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蕾をつけたミツマタ(三椏)